月宮の日記

読んだ本の解釈とか手帳とかだらだらと自分の考えを好き勝手語っていくだけのブログ。作品のネタバレも普通にあるので注意。

凧葉真琴と坂巻泥努

双亡亭壊すべし』における最大の伏線回収はおそらく黒子衣装に身を包む少女、帰黒の正体に関することだろう。
詳しいことは本編を参照にしてもらいたいのだが、青一の『キョウダイ』である『マコト』の容姿が泥努そっくりだったこともあり、マコト=泥努ではないかという考察がなされたことがある。私も正直最初はそうかなとは思ったが読み進めると「あー!」となった。

ということで青一のキョウダイもとい妹、帰黒(本名:凧葉真琴)と坂巻泥努に関する考察記事を書いてみたいと思う。実はこの二人、容姿もさることながら、様々な共通点を持っていることに気付かされる。それを一つ一つ見ていきたい。

共通点①全身黒の衣装
帰黒はもともと白水白城教の巫女であったが、残花少尉と共に双亡亭に突入する際は前述のとおり、黒子衣装に身を包んでいる。しかもぴっちりしているのでその分巨乳や尻が強調されてエロい。泥努も黒のタートルネックに黒のパンツという全身タイツみたいな服を着ている。

共通点②名前が二つある
帰黒という名は彼女の育ての親である白城瑞祥がつけたものであり、本名は凧葉真琴だ。坂巻泥努も本名は『由太郎』であり『泥努』はおそらく彼自身がつけた雅号だと思われる。ちなみにこの名前が二つある登場人物は帰黒と泥努、そして五頭応尽(本名:応吉)の3人であり、この本名を呼ぶのはいずれも彼等と近しい人物である(マコト→兄の青一、由太郎→幼馴染の残花、応吉→父親の是光)。

共通点③色や味で物事を知る
泥努は昔から物事が色で視える体質であり(姉しのぶは音楽も聞こえるらしい)この能力のために座敷牢に入れられかけた。帰黒も味智覚という能力を持っており、空間を舌で舐めることで様々なことを知る。帰黒の味智覚は霊能力の類ではないというが、いつごろからこの能力が使えるようになったのかも不明だ。いわゆる『共感覚』の一種である可能性がある。

共通点④年の離れた兄や姉の存在
泥努には7歳年上の姉、しのぶがいた。帰黒も6歳年上の兄、青一がいる(青一が12歳で成長が止まっている為外見的には年齢が逆転してしまっている)。泥努は弟であり、帰黒は妹だ。泥努が姉に対して重い愛情を抱いていたが、帰黒も青一のことが大好きであり、兄が無抵抗に傷つけられた時は激しい怒りをあらわにしていた。ちなみにおしとやかなお姉さんのような振る舞いを見せる帰黒だが、記憶が戻った後は青一の前では幼い妹に戻るというギャップを見せる。年上の妹あざとすぎる。

共通点⑤自分を醜いと思っている
帰黒は育ての親である瑞祥から(彼女の強大すぎる力を封印するためとはいえ)「お前は醜い」という「子腐」の呪いをかけていた。そのため帰黒は誰もが綺麗だと認める美少女であるにもかかわらず自分を「醜い」と思い込んでおり、頭巾で顔を隠していた。一方泥努はそのような素振りを見せでいないが(寧ろ帰黒と違って自信に満ち溢れているように思えた)凧葉から「アンタも自分のコト醜いって思っているハズなのさ」(第二十五巻)と看破された。泥努は「嫌いで嫌いで嫌いな自分を隠すために〈双亡亭〉に引きこもった」(同)と。帰黒は自分の顔を隠していたが、泥努は自分そのものを世界から隠したのだ。
ちなみに泥努の顔立ちは繊細な美青年といった感じなのだが凧葉から「男前」と指摘されるまでは自身の容姿についてはまるで自覚がなかった。このあたりも帰黒と共通しているといえる。

共通点⑥黄ノ下残花の存在
過去の記憶を失い、白水白城教の巫女として瑞祥に12年間育てられた帰黒は18歳の誕生日を迎えた夜、血濡れの残花少尉と出会い、彼と共に双亡亭に行くことを決意した。そしてともに行動するうちに、彼に対して恋愛感情を抱くようになる。その想いを自覚した帰黒は「子腐」の呪いを解かれて力を取り戻した後、残花少尉と泥努が話し合う時間を作るため、たった一人で自衛隊の艦砲射撃を受け止めた。
他方泥努は幼馴染である残花少尉に対して興味なさげ…かと思いきや幼い頃に話した『一緒に龍宮城に行く』(第二十三巻)という約束を90年近く覚えており、それを心の支えとしていた。かつて世界を周り戦争や飢餓と言った現実を見てきた泥努は「この世界は醜悪なのだ」(第二十五巻)と言い、更に凧葉曰く自分を醜いと思っていた。そのた愛する姉であるしのぶを殺めた後、凧葉や紅と出会うまで泥努にはかつて龍宮城に行こうと約束した(たとえそれが軽口レベルであっても)幼馴染しかいかなったのだ(おそらく残花が逃げた時に自分を心配した色を発していたのも大きいだろう)。泥努は残花少尉が幼い時に話していた黄ノ下家の家訓「散るを追うことなかれ 残りし花を愛でるがよし」(同)を覚えていたのだが、泥努にとっても残花は「残りし花」だったのかもしれない。

余談だが第248回で双亡亭を消滅させることを決めた泥努に、残花少尉は「己と共に、元の時代に帰らぬか?」(同)と誘った。しかし泥努は「あの時代はすでに生きた」(同)と穏やかにほほ笑んだ。その後に泥努の口から出てきたのが上記の家訓である。友と龍宮城で永遠に生きることを望んでいた彼は、最終的にその友の手を離すことを選んだのだ。一方帰黒は兄青一に背中を押され、元の時代に帰っていく残花少尉を追いかけた。去っていく相手を追う者と手放す者、この対比を考えるとなかなか面白い。
ちなみにだが巻末の描きおろしで残花少尉は帰黒から「ジンギスカン食べたかった」という心の中を味智覚でばれている。泥努は幼い頃、おそらく色で残花がミッちゃんという女の子に恋をしていたことを見抜いていた。残花さん、心の中読まれすぎだろうと思うが、彼自身は「裏表のない人」「真っ直ぐな気骨の人」(byタコハ)であるため、心が読める2人にとっては居心地がよかったのかもしれない。

と、話が少しそれたが、帰黒と泥努は作中でも絡みが少ないが、こうして見ていくと様々な共通点がある。帰黒自身は絵のことはどうなのかわからないが、兄を持つ妹と姉を持つ弟という似た立場である2人は意外と話してみると仲良くなれたのではないか?とも思う。