月宮の日記

読んだ本の解釈とか手帳とかだらだらと自分の考えを好き勝手語っていくだけのブログ。作品のネタバレも普通にあるので注意。※2024/2/29 更新再開

九相図と龍宮城

※短いですがちょっと妄想が強いので畳みます

 

双亡亭=龍宮城と作中で(というか二十三巻以降で)言われていたが、そうなると一つ問題がある。泥努が自作の龍宮城のつもりで双亡亭を建てたとすると、残花少尉が詠座やしのぶと同様、元凶の一人みたいなってしまうのだ。何故なら「オレとよっちゃんと二人で龍宮城に行ったらええんじゃ」(第二十三巻)と言わなければ泥努が龍宮城=双亡亭を建てることもなく、また泥努がこもる理由の半分ぐらいは失われるからだ。そして残花少尉の部下たちは、実は少尉の指揮が誤っていた云々ではなく幼い頃に由太郎と交わした約束に巻き込まれたことになり、他の様々な被害も起きなかっただろうからだ。(十四巻で自衛隊たちを消し去った時の泥努が言った「双亡亭は壊させん」=「龍宮城は壊させん」だとしたら…)ただ泥努があの場に双亡亭を建てたからこそしのたちはある種封じ込められた格好となっており、世界の滅亡を100年近く先延ばしにしたという功績はある。だから最初から泥努が双亡亭を自作のアトリエとしてだけでなく残花と共に永遠を生きるための龍宮城として建てた、というよりはしのを支配して自分が龍宮城にいるみたいだとなった、単に時間がねじれた双亡亭を龍宮城に例えたに過ぎない、と考えるのが自然であろう。(というか泥努は目の前のことに意識が向くと他のことが頭から消し去ってしまう傾向があるため、ぶっちゃけ残花少尉が双亡亭に来るまで『約束』のことはおろか友達のことなんて忘れてたんじゃないの?という疑惑がある)

あと九相図の問題についてなのだが泥努は「あの夜の再現」とも言っていた。あの夜とは由太郎がしのぶに頼まれて首を絞め、泥努と化したあの夜である。だが「あの夜」とは姉の首を絞めたところだけでなく、残花が「何やっとるんじゃよっちゃん!」(第八巻他)と由太郎が姉の首を絞めたところを目撃したところまでを含めっていたとしたらどうだろう。実際泥努が紅に見せた記憶は「のう残ちゃん、幸せそうじゃろう」と歪んだ笑みを浮かべる由太郎までだったし、残花少尉の言うあの夜はまさに「何やっとるんじゃよっちゃん!」までである。とすれば泥努が九相図を量産した理由について「残ちゃんがあの時みたいにまた私のもとにやってくるかもしれない」と考えた可能性もある。九相図を作った時期については「双亡亭を建てた時」としか泥努は言っていない。泥努が双亡亭の建設に着工したのは関東大震災後、世界旅行に行って帰ってきた後であり、母屋部分が完成するまで10年の歳月を要した。つまり九相図を作ったのは双亡亭建設に費やした10年のいずれかということになる。ということは残花少尉が絵から脱出した後に九相図を作り始めたということも十分考えられるのだ。(あと花嫁の首を絞める時の泥努の格好、実はあのダサイチョッキを着ていない。あのチョッキはしのと出会う前の泥努は黒タイツタートルネックの上に着ていたので時系列を考えるうえで結構役立ったりする)
しかししのを支配して不老不死となった泥努が、外を出歩いて女性に声をかけてアトリエに連れ込むところが想像できない。そうするとやはり九相図はしのと出会う前だろうか。そうなると残花少尉が部下たちと双亡亭に踏み込んだとき、既に花嫁のミイラが存在していたことになる。あのまま少尉たちが捜査を続けていればミイラを発見される恐れもあっただろう。残花少尉が部下ごと絵に引き込まれのは自身の犯罪を隠すため、口封じのためというのもあったかもしれないのである。泥努がいまさらそんな自己保身みたいな真似をするとも思えないが「自分の醜さを隠す」のであれば十分やる理由はあるだろう…多分。

…やっぱりファンブック出してくれませんか(n回目)