月宮の日記

読んだ本の解釈とか手帳とかだらだらと自分の考えを好き勝手語っていくだけのブログ。作品のネタバレも普通にあるので注意。※2024/2/29 更新再開

八巻表紙のあれこれ

双亡亭壊すべし』の単行本には毎回坂巻泥努が書いた「壊すべきはなんぞ」の詩が書かれている。詩の内容は表紙を飾った登場人物のことだったり各巻の内容だったりといろいろと意味を考察してみたくなる。
今回取り上げる八巻の表紙に描かれている人物は残花少尉であり、当巻では気持ち悪い笑顔で絵に引き込まれた後の残花少尉の過去や泥努がいかにして「侵略者」を支配し「双亡亭」の主となったのかが描かれている。しのちゃんマジカワイソス
その八巻の詩はこうだ。

壊すべきはなんぞ 壊すべきはなんぞ
いつかこうして居たっけな
ちょうど其処に腰かけて 一緒にはなしをしただろう
忘れた 月夜の長い影 蓮華の花のむらさきも
ひかった丘の景色すら
思い出すとてなんになる
それよりこの手のはむまあが 砕きて潰すこれからを
語り出すのを聞いてくれ(第八巻)

残花少尉と泥努、二人は子供のころ、よく蓮華畑で遊んていた。縁側で絵を描く由太郎とそれを見ている残花。幸せだった少年時代はもう過去のものになってしまった。そんな切なさを詠ったものと思われる。割と泥努さん直球である。
姉の件や昭和7年の再会を経てすれ違うこととなってしまった二人。双亡亭の主として超人的に振舞いながら「オレとよっちゃんとで二人で龍宮城に行ったらええんじゃ」(第二十三巻)という約束を心の支えに友を待ち続けた泥努。自分を陥れ部下を奪った友に対する憎しみを抱きつつも「嗤った」理由を問い質したい残花少尉。敵同士となっても心の底では互いを友人だと思っていた。残花少尉は言わずもがな、泥努も残花のことを「良い仲良し」(第十二巻)と言っていた。紅から「お前に友達は?」と訊ねられた時に残花の名前を真っ先に出していたほどだ。

ちなみに表紙の残花少尉は第七巻(帰黒が表紙)で落下した双亡亭の看板を踏みつけているのだが、のちに言われるように双亡亭=龍宮城だとすると「残花は龍宮城へは行かない」という伏線なんだろうか。
あと表紙が七巻→帰黒、九巻→泥努なので並べてみると何気に嫁(予定)と幼馴染に残花少尉が挟まれている格好となっているのがちょっと面白い。二人とも矢印が重いし。