月宮の日記

読んだ本の解釈とか手帳とかだらだらと自分の考えを好き勝手語っていくだけのブログ。作品のネタバレも普通にあるので注意。※2024/2/29 更新再開

『赤と黒』

読んだのはだいぶ前だが、今回はスタンダールの『赤と黒』についてちょっと語りたい。というか主に語るのは主人公であるジュリヤン・ソレルについてである。私が読んだのは新潮文庫文庫版の小林正氏の訳だった。

ざっくりした内容はこんなかんじだ。物語の舞台は19世紀のフランス、フランスのヴェリエールという町である。そこに暮らす主人公のジュリヤン・ソレルは材木屋の息子だが、華奢な体つきの美青年だった。かれは父親や兄たちから虐げられていた(ジュリヤンが本を読むだけで父のソレル氏が殴り掛かるほど)そのためか見た目は美青年でも性格がかなりひねくれていた。同時に野心に燃える男であり、かれは自分がのし上がるために聖職者になろうとしていた。そうしてジュリヤンはヴェリエールの町長であるレーナル氏の家の家庭教師になるが、レーナル氏の妻であるレーナル夫人を誘惑したことで禁断の恋に落ちてしまうのである。最初はレーナル夫人がジュリヤンに惹かれる格好であったが、だんだんジュリヤンもレーナル夫人に恋をするようになってしまったのだ。(ただしジュリヤンは自尊心の塊であるために、自分がレーナル夫人を愛するようになtことなど絶対に認めようとしなかったのだが)

ジュリヤンの恋の相手はレーナル夫人だけではない。ジュリヤンはレーナル家にいられなくなり、神学校に入学するが、そこで世話になったピラール神父のつてで、パリのラ・モール公爵のもとに仕えることになる。そこで出会ったのがラ・モール公爵の娘、マチルドであった。マチルドもジュリヤンに惹かれるが、言うなれば「先に好きだと言ったほうが負け」的な恋の駆け引きを行うのである(なんか説明がざっくり過ぎる気もするが、どうか赦していただきたい)。しかもマチルド嬢には両親が決めた結婚相手がいたし、ジュリヤンは材木屋の息子という身分である。自身がのし上がるためであるとはいえ、レーナル夫人に続き、ジュリアンはマチルドとも禁断の恋をすることになってしまったのだ。しかもレーナル夫人の時とは違い、マチルドはジュリヤンの子供まで宿すのである。もちろんマチルドの両親は猛反対だが、最終的に結婚をどうにか許される。しかしそのあと、レーナル夫人からラ・モール伯爵に届いた手紙が、ジュリヤンの運命を大きく狂わせる……。とまあこんな感じで、詳しくは書かないが結局最後は破滅エンドで終わる。ちなみにタイトルの『赤と黒』はルーレットに見立てた節、ジュリヤンが来ている服(赤→軍服、黒→聖職者)という説もあるのだが、私はルーレット説を押したい。

この物語で欠かせないのはなんといっても主人公のジュリヤン・ソレルだろう。このプライドの塊であり性格がひねくれて且つ野心家という主人公は、おおよそ善人とは程遠いのだが、若さゆえなのか『目的のためならば手段を選ばない』という非情さや冷徹さを完全には身につけられていない。そのため油断してうっかり本音を漏らしたり、自身に向けられる愛情に涙したり、感激したりもする。だからレーナル夫人にしろマチルドにしろ最初は自身の出世と野心のため、打算のために近づき、彼女たちの気を引くのだが、だんだん彼女たちを本当に愛するようになってしまうのだ。要は非情、冷徹に徹しきれなかったのである。もしジュリヤンが本気で目的のために二人を利用するだけであり、一切の愛情を抱かなかったら、多分結末は違っていただろう。詰めが甘かったというべきなのか、ジュリヤンも実は悪い奴じゃなかったのだというべきなのか。ただマチルドはあんなことになってしまって(これについてはネタバレ防止のため伏せる)レーナル夫人以上にかわいそうだと思うので、やっぱりジュリヤン爆発しろ。(爆発どころじゃなかったけど)。