2020-01-01から1年間の記事一覧
スメルジャコフが自殺に至るまで、彼がフョードルを殺害してから『神秘的な客』ミハイルと同じように『生ける神』の手の内にあり『真の罰』を受けていたこと、彼を赦し、彼のために祈ってくれる『親切な人たち』の存在があったこと、だが彼自身が『親切な人…
表題の『読書について』は前回の記事で触れたので、今回はほかの二編『思索』と『著作と文体』について書いていきたい。これ本当に面白い。何度も読み返したくなる。まあ、書かれていることは『読書について』と大隊同じではあるが、ここでは読書そのものよ…
岩波文庫版だと『ショウペンハウエル』表記になっているが、『ショーペンハウアー』のほうが一般的っぽいので当ブログでもショーペンハウアーでいきます。 この本は『思索』『著作と文体』『読書について』の3編が収録されているのだが表題の『読書について…
『スメルジャコフ、最期の一か月間』の続きを書こうと思ったが、今日はそんな気力がないのでちょっと独り言。 同じシベリア流刑でも『罪と罰』のロージャが二人殺して8年なのに、『カラマーゾフの兄弟』のミーチャが誰も殺してないのに20年なのは理不尽だと…
前回『神秘的な客』(第6編2D)ミハイルが十四年間落ちていた『生ける神の手』が殺人者に対する『真の罰』であり、またスメルジャコフも同じく『生ける神の手』に落ちていたのではないかと考えた。この『生ける神』とは何者なのか。ただ罪人に裁きを与えるた…
わたしに圧倒的に足りないものは構成力だと思う今日この頃。 というわけで今回の記事もかなりの遠回りになる。前回の記事で『今は亡き司祭スヒマ僧ゾシマ長老の生涯より』に収録された『神秘的な客』の事件がフョードル殺害事件に似ているということに触れた…
フョードル殺害後、スメルジャコフは本物の癲癇発作で倒れ、病院に入院することになった。事件の四日後、イワンと最初の対面をしたときのスメルジャコフの様子はこうだった。 最初の一瞥でイワンは、相手が完全な極度の病的状態にあることを、疑う余地なく信…
スメルジャコフは自身の出自に対してコンプレックスを抱いており、それが『神がなければすべては許される』という思想に本気で取り組み、フォードル殺害の動機につながった、というのが私の解釈である。スメルジャコフ自身もマリアに対してこんなことを言っ…
今回は『親切な人たち』の続きを書こうと思ったが、その前に自分なりに本を読むときに気を付けたいこと、考察や解釈をブログで書くときにきをつけいたいことをちょっと書いていきたい。余計な文書を挟んでしまうことを許していただきたい。 言うまでもないが…
以前の記事でも『スメルジャコフは決して誰からも愛されなかったわけではない』といったことを書いたが、その理由は、彼の周囲にいる『親切な人たち』の存在にある。 「マルファ・イグーナチェヴナがわたしを忘れずにいてくれて、何か必要なものがあると、今…
前回の記事に引き続き、今回もスメルジャコフとアリョーシャの『関係』あるいは『交流』についての考察と私なりの解釈を述べていきたい。 部屋に入るなりアリョーシャは、一時間ちょっと前にマリヤ・ゴンドーラチェヴナが彼の下宿に駆けつけて、スメルジャコ…
最近今更King Gnuの『白日』を聴いている。聞けば聞くほど歌詞の内容がスメルジャコフっぽいと感じる。望まなかった誕生、イワンとの出会い、フョードルの殺害、そして自ら命を絶つまでの二か月。特にサビの『真っ新に生まれ変わって~』のくだりが、一番、…
以前BSPで放送されていた『フランケンシュタインの誘惑』という番組があった。この番組はロボトミー手術やスタンフォード監獄実験、ナパーム弾や核兵器といったものまで、科学史の『闇』を扱った番組だった。この番組で最後にナビゲーターが言う言葉がある。…
ある日、何気なしにテレビを見ていたら、某俳優がこんなことを言っていた。 「つらいことがあった時、自分を励ましてくれるのは過去の自分だけだよ」 うろ覚えではあるが、確かこんなことを言っていた。この言葉で思い出したのが、『カラマーゾフの兄弟』の…
タイトルなんのこっちゃいと思われたかもしれないが、当ブログが目指したいスタンスというか『こういう方向性で記事を書いていきたいなあ』という方針についてである。決意表明というほどでもなくかなーり緩い願望ものではあるけれど。 どういうことかという…
私は毎年手帳を買っている。しかしそれを一年間使い続けられたことは実を言うと1回しかない。あとは長くて半年、短いと3か月ぐらいで使うのをやめてしまう。それは何故なのか、ということを自分なりに分析して、記事を書いていきたい。同じ悩みを持つ人たち…
外出自粛と仕事の忙しさと連日のコロナニュースのあまり私の心はやや荒んでいたようで、どうもそれがこのブログの文章にも所々表れている。書いたときは何とも思わないが読み返してみると「何でこんな攻撃的なんだ」と頭を抱えたくなることもしばしばある。…
アリョーシャがフョードル殺害の犯人についてどう思っているかを知らせるのは「あなたじゃない」(第11編5)から遡ること二か月前、イワンがモスクワから戻ってきたときのことである。 この町では最初にアリョーシャに会ったが、話してみて、相手がミーチャ…
『カラマーゾフの兄弟』の主人公、アリョーシャの幼馴染である少女、リーズ。前半は『リーズ』表記だが後半になるとどういうわけか『リーザ』表記になる。小児麻痺で足が悪く、いつも車椅子に乗っているこの14歳の少女は作中で『小悪魔』と言われている。理…
読んだのはだいぶ前だが、今回はスタンダールの『赤と黒』についてちょっと語りたい。というか主に語るのは主人公であるジュリヤン・ソレルについてである。私が読んだのは新潮文庫文庫版の小林正氏の訳だった。 ざっくりした内容はこんなかんじだ。物語の舞…
趣味について「読書」と答えると、たいてい聞かれることは「好きな作家は?」ではあるが、私は以前からこれらの質問の返答にかなり窮してきた。というのも、私には「好きな作家」というものがいないからである。例えば私は『カラマーゾフの兄弟』という作品…
『カラマーゾフの兄弟』における『教唆』といえば、イワンが『父親殺し』をスメルジャコフに『唆かした』ことが挙げられるだろう。(でも私は個人的にイワンがスメルジャコフを『唆した』というのは少し違うんじゃないかとは思っている) 。しかし実は『唆さ…
わたしは作品を考察するにあたり、各登場人物を『生身の人間』として考えたいと思っている。『カラマーゾフの兄弟』でいえば、ミーチャ、イワン、アリョーシャ、さらにスメルジャコフ。『悪霊』のスタヴローギン、『白痴』のムイシュキン、『罪と罰』のラス…
今回のテーマは「あなたじゃない」についてである。何のことかというと「カラマーゾフの兄弟」に出てくるアリョーシャの台詞だ。このセリフが出てくるのは時系列だとスメルジャコフの三度目の対面の直前である。ミーチャとの面会を終え、カテリーナのもとを…
わたしはドストエフスキーの研究家でもなければロシア語に堪能なわけでもない。更に言えばドストエフスキーオタクというわけでもない。つまりドストエフスキー本人に関してもまったく詳しくない、言うなれば「ニワカ」「素人」なのである。こんな私でもあれ…
「カラマーゾフの兄弟」において眼鏡キャラと言えばカラマーゾフ家の次男イワンを思い浮かべる人が多いと思われる。私もイワン=眼鏡キャラなイメージがある。そのため眼鏡をかけていないイワンを見るとなんかコレジャナイと思ってしまう。しかし実をいうと…
スメルジャコフを語るうえで外すことができないのが、カラマーゾフ家の次男イワンとの関係だろう。スメルジャコフは三度目の対面の時、フョードルの元から盗み出した三千ルーブルをイワンに返しながら、こんなことを話している。 「わたしにはこんなもの、全…
『だれにも罪を着せぬため、自己の意志によってすすんで生命を絶つ』(第11編10) ミーチャの裁判の前日、イワンとスメルジャコフの三度目の対面が終わった後、フョードル殺害の『犯人』スメルジャコフは謎めいた遺書を残して自殺をする。スメルジャコフの自…
ドストエフスキーの作品というのは100人いれば100通りの解釈が可能と言われているらしく、同じ作品でも、読み手によって解釈や考察が別れることはザラである。私も読み手の一人として様々な解釈や考察をしてみたい!ということで挑んでみたのだが、見事にぐ…
はじめまして。月宮です。 以前はnoteでドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の自分なりの解釈や考察(といっても私の場合は大半が妄想ですが)を中心に文具ネタとか読んだ本の解釈とかをつらつらと投稿していましたが、このたびnoteをやめてブログのほ…